今週は戦前の雑誌『改造』宛を中心にした書簡が入荷です。
メインは「共産党最大の裏切り者」と呼ばれた、佐野学さんの書簡5通一括です。佐野さんは鍋山貞親さんと連名で、共産党からの転向声明となる『共同被告同志に告ぐる書』を雑誌『改造』昭和8年7月号に発表。翌8月号には単独で『コミンターンとの袂別』を発表しております。箕輪錬一さん宛の昭和8年7月17日付の書簡で依頼している荊妻への稿料送金は、8月号掲載の『コミンターンとの袂別』の事と思います。
転向声明を知った荒畑寒村先生は『改造』8月号で『転向した巨頭の思出』を発表し、佐野さんを含む転向組を批判しております。獄中で友人からその詳細を聞いた佐野さんは、昭和8年8月10日付の書簡で「病犬」呼ばわりまでして、荒畑寒村先生と山川均先生を徹底的に批判しております。
伊原敏郎(伊原青々園)さん宛の3通は、第七高等学校造士館時代が2通と東京帝国大学法学部時代が1通です。高校時代の2通では歌舞伎への愛情が、大学時代の1通は草稿掲載の依頼ですが、共産主義的な思想の芽吹きが読み取れる内容です。
九州の芝居好きの一青年が「共産党最大の裏切り者」と呼ばれるまでの物語、ドラマがあって面白いですね。
その他は『改造』宛という事で社会主義的な方々が多く、インドの革命家で日本へ亡命し、スパイ容疑で逮捕されたK.R.サバルワルさんや、日本のスパイとして銃殺された、ロシアの作家ボリス・ピリニャークさんと、謎で眉唾な書簡もございます。
最後に大阪天満橋で営業をしている「古書 鎌田」さんから、古書目録第3号が届きました。
ご送付いただき、ありがとうございます。
鎌田さんは2010年にオンライン古書店「moderna」を開業、2016年に「古書 鎌田」と屋号を改め、資料系の古書店として営業しております。目録デザインや商品構成などとてもセンスのある内容で、思う存分楽しめる目録でした。ホームページのデザインもすごい格好良くて、鎌田さんのセンスの良さが伝わります。関西圏では1番の資料系古書店ですので、1度ホームページをご覧ください。目録も無料送付していただけるようですので、是非是非ホームページからお申し込みください!
古書 鎌田
住所:530-0043 大阪府大阪市北区天満3-4-5 タツタビル301
電話番号:06-6940-4948
FAX:06-6940-4940
メール:books@kamatakeisuke.com
ホームページ:http://kamatakeisuke.com
今週は良くわからない物ばかりの新入荷ですが、こんな良くわからないものに値段を付けるのも古書店の醍醐味です。売れるかどうかはまた別の話ですが…。
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